【#15 映画館で大人の映画を見る】Where to Invade Next / マイケル・ムーアの世界侵略のススメ
今日から公開の『マイケル・ムーアの世界侵略のススメ』を見てきました。
主にヨーロッパ諸国の優れた社会制度を紹介する、というのが乱暴なあらすじ。
マイケル・ムーアがお得意の皮肉たっぷりなムーア節を織り交ぜながら実際に様々な国を訪れ、優れた制度やその制度を支えている人々、恩恵を受けている人々に取材しながら紹介していくというドキュメンタリー。
今までずっとアメリカの国内にいてアメリカ社会の抱える矛盾を強引なアポなし取材という手法で炙り出してきたマイケル・ムーアは、この映画ではアメリカの外に飛び出して海外との対比でアメリカの社会システムの抱えている様々な矛盾に問題提起をしています。
映画で紹介されている”常識”は日本人の私も驚くようなものばかり。
- イタリアは1年間に8週間も有給休暇が保証されており、昼休みは2時間で、12月には12月の給料と同時に”13ヶ月目”の給料が支払われる
- フランスの学校給食は前菜からはじまってチーズとデザートで終わるフランス料理のフルコースで、陶器の食器とフォークにナイフでいただく
- 子供の学力世界一のフィンランドには宿題がなく、年間の授業時間はヨーロッパで最短
- ノルウェーの刑務所はバストイレ付きの一軒家タイプで、最長刑期は21年、もちろん終身刑も死刑もない
- スロベニアでは誰でも(留学生であっても)大学教育を無償で受けることができる
などなど。
教育のあり方、労働とは何か、真の男女平等がもたらすものとは、真の豊かさとは何か、私たちは社会としてどういった価値を大切にして、何に投資をすべきなのか。
アメリカは面白い国だなーと思います。
国民全員が拠り所にできるような歴史がなく、人種も宗教もバラバラな人が寄り集まっていて、しかも今尚新しくアメリカを目指して人が集まってくるので歴史が積み重ねられたり人種が固定化されることなく常に構成要員がアップデートされていく国というのは、世界中見渡しても非常にユニークな存在。
だからこそ分かり合うためにまず自分の考えを発信することが求められるし、分かりやすく平たい言葉で、あるいは聞いた瞬間に好き嫌いの感情が動くような極端な例を挙げて発信された言葉はより大きなパワーを持ちます。
トライ&エラーに対する寛容性の背景には、これだけ多様な価値観のより集まりの中では一発で回答を出すことが非常に難しいことが無関係ではないでしょう。
あと、アメリカンドリームっていうみんなが大好きな大幻想もこれを後押ししているかも。あれだけ大きな見返りあるならチャレンジしてみようかと。3億円当たるなら宝くじ買ってみようかと思う、みたいな。
この映画はエンディングに向かって「なんだよマイケルいいこと言うじゃん!」的な集約を見せるのですが、「アメリカなら大丈夫かもしれない」と思わせられるのは結局アメリカが建国の当時から変わらずに世界中の人種と宗教を受け入れ、玉虫色に変化しながらも常に新しい価値観や新しい正義を積極的に生み出し、受け入れ、発展させてきたからじゃないかと思います。
偶然にも今日、オバマ大統領が広島を訪問するという歴史的な出来事がありました。
オバマ大統領みたいな存在を生み出して広島訪問を実現してしまうアメリカはまだ希望の国たり得る、と思った出来事でした。
戦後アメリカの後を追ってアメリカの社会システムを数多く取り入れてきた日本は、オバマのような存在を生み出し得るのか。
「この国はこれからもっと良くなる」と感じたことはないのだけれど、「この国をもっと良くする」って思わないといけないんだろうね、私たち世代はそろそろ。
「映画館で大人の映画を見る」は、妄想ウィッシュリスト#15でした。