エスパーでもメタリストでもない私たちだから
すみません、ワーキングマザーです。
”無理をせず普通に自分らしく生きたい”という気持ちを主張すると何かと「義務を果たさないくせに権利ばかり主張して」とか「大変なのはお前だけじゃない」とか「自分たちで選んで切り開いてきた道のくせに今更文句言うな」みたいなコメントがワラワラと湧いてくる世知辛い世の中。
子育て世代の主張が賛否両論様々な議論を巻き起こしている場面に頻繁に遭遇しては、厳しいコメントに身をすくめてそっとページを閉じています。
というわけで、すみません、ワーキングマザーです。
以前、人は未体験のことは実感を伴って理解できないんだから、強制的に体験させてみることにも一定の意味があるんだ、というようなことを書きました。
体験してみないと分からないのと同じように、私たちはエスパーでもメンタリストでもないんだから相手がどんな気持ちで、何を考えているか分からないわけです。
唯一わかる方法が言葉を媒介にすること。
気持ちや考えは言葉にして吐き出してもらわないと分からないんです。
気持ちや考えを心や頭にしまい込んでいる限りは、自分が本当に何を考えているのかは他人にわかってもらえません。なんとなく察してもらうことはできたとして、考えていることを100%理解してもらうことはできないし、気持ちに完璧にシンクロしてもらうこともできません。
自分自身の気持ちだって、SNSに吐き出してみて初めてきちんと自覚したりします。
言語化しないと、理解も共感もできないのです。
恋人同士だろうと、上司部下だろうと、夫婦であろうと、親子であろうと、相手の気持ちや考えを暗黙のうちに全て推し量るなんてことは不可能です。阿吽の呼吸なんて言うけど、それは日頃のコミュニケーションがあってこその賜物であって、日頃からコミュニケーション取れていない間柄では阿吽の呼吸は成立しません。
女性活躍推進や長時間労働の文脈でよく見かけるコメントに、次のようなものがあります。
「俺/私たちは不満も言わずに黙々と耐えて頑張ってきたんだ。(だからお前も文句言わずに黙って耐えろ。)」
でも先人達が黙って黙々と耐え忍んできたその結果が、非効率が改善されず長時間労働が常態化した今の社会。
今、私たちも黙々と耐え忍んでしまったら、今後もそれは変わることがなくさらに少子高齢化が進んだ時代を生きる子供達に受け継がれてしまう。
声をあげなきゃ、知られることもない。
知られることがなければ、問題にされることもない。
問題にされることがなければ、改善されることもない。
私自身、育休が明けて復帰した時に困難に感じることにたくさん遭遇して、その度にそのことを声に出して周囲に伝えるか、助けを求めても良いものなのか、とても悩んだ経験があります。
でもある日後輩の女の子に「いつも完璧に家事も育児も仕事もしてて、すごいなぁって尊敬してます。でも私にはできないと思うから、結婚する時には大好きな今の仕事を辞めなくちゃいけないかなって思ってるんです」と言われて決心しました。
今のしんどさを隠さずに周囲に打ち明けよう。
上司や同僚に相談して助けてもらおう。
家族にも辛いんだよって伝えよう。
実際にはその時の私は完璧とは程遠く、仕事のストレスで家で子供達に怒鳴り散らし、週の半分はお惣菜とファミレスご飯、家事は常に山積みで家の中はゴミ屋敷一歩手前、仕事だってこぼしまくりで毎日誰かに謝っているような状態でした。
そんな状態だったのに、外から見ると”完璧にこなせている”と見えているのか!
ということに愕然とし、絶望し、さらにそう見えていることが後輩を追い詰めているということに猛烈にショックを受けました。
だから、しんどい時、辛い時、無理だと思った時、理不尽を感じた時、とりあえずそう感じていることを声に出してみることにしました。
改善案や代替案を用意しておかないといけないんじゃないかと、でも行き詰まって何も思い浮かばないままおそるおそる声をあげたこともあります。助けてーって。
そしたら、聞いてくれる人が現れました。聞いてもらえるだけで自分の気持ちも整理できて前に進む勇気が湧いてきます。
アドバイスくれる人や手を差し伸べてくれる人も現れました。中にはトンチンカンなアドバイスもあったけど、無駄なアドバイスも手も一つもありませんでした。
もちろんご批判もいただきました。スルーすることもあったし、できずに傷つくこともありました。実は批判して来る人が悩みを抱えていていっぱいいっぱいだってこともありました。
声を上げることで、とにかく何かが動きました。前や後ろや斜めに、半歩、一歩、二歩。ただ立ち止まるだけでなく、とにかく動くだけで見えるものがたくさんありました。
結局元の場所に戻ったとしても、その場所は訳もわからずただ置かれた場所から、自分で選んだ場所になりました。
なので多分私はこれからも、言葉にして、声をあげていくと思う。
たぶんね。